~考察~ ハラスメント ④父の入院と死

父の入院と死

 

昨年の冬、私の父が路上で転倒し、股関節骨折で入院しました。母はメンタルがそれほど強くありません。弟は親戚からも変人扱いされているような人間で、役に立ちません。私は生活の場を実家へ移しました。

 

入院した父のサポートは、(主に精神面で)想像以上に大変でした。この状況で、理不尽な罵倒を繰り返す山鼻氏の相手をする余裕はありませんでした。私は『ばぎるんジャー』の仕事を放棄しました。当然のごとく苦情が来ましたが、そもそも私はその仕事を引き受けるとは一言も言っていないのです。

連載一回目が終わった後で、「あのページを頼む」と山鼻氏から事後承諾を求められました。コミック作家の那波氏を巻き込んだ責任上、何回かは続けざるを得ないとは感じていましたが、「はい」と答える気にはなりませんでした。

答える代わりに「他人を奴隷のように扱うのも、他人から奴隷のように扱われるのも大嫌いなんですよ」と嫌味で返しました。山鼻氏が平然と「俺もそうだ」と即答したので呆れ返り、こういう人には何を言っても無駄だと、それ以上は話す気がなくなりました。

 

父の怪我は骨折だけでしたので、それほど心配はしていませんでした。しかし、誤嚥性肺炎を繰り返し、入院して5ヶ月目の昨年6月に他界しました。

 

私は山鼻氏と直接関わることを避けていましたが、新たな問題が出てきました。『ミニ四駆のムック本』を作るという話が持ち上がり、私と那波氏がメインになって担当してくれないか?というオファーが山鼻氏からあったのです。

普通ならば断っていたでしょう。しかしミニ四駆は那波氏の得意分野です。彼には『ばぎるんジャー』で助けてもらった借りもあります。私は那波氏にオファーがあったと説明し、“彼が引き受けるなら自分も引き受ける。彼が断わるなら自分も断る”ことに決めました。

那波氏は一晩考えた後で「引き受ける」と言ってきました。

 

山鼻氏はミニ四駆ムックのスタッフ選定を私に一任すると言ってきました。写真撮影やページレイアウトは知人に依頼しました。さらにモデリング技術解説のページはオオゴシトモエさんに依頼するつもりでした。彼女とは面識がありませんでしたが、女性モデラーの第一人者であるらしいし、読者の大半が男性であることを考えれば、女性の出てくるページは華があっていいと思ったのです。

 

それをスタッフの一人に話すと、「オオゴシさんは難しいだろう」と言われました。彼女は以前ラジマガで連載を持っていて、辞める時に山鼻氏のナルシシズムを逆撫でする発言をしたらしいのです。私は気にしませんでした。個人的な確執より、本を売ることが最優先事項です。プロとしては当然の話です。

しかし、オオゴシさんに依頼すると告げると、山鼻氏は執拗なまでに彼女の悪口を言ってきました。「オオゴシはきったない模型を得意げに自慢して回っているだけで、技術も知識も何も持っていない」と繰り返し主張しました。

それでも私が譲らないと、山鼻氏は「オオゴシはこんなにも性格が悪い」と複数の具体例を挙げ、「人間として最低だから使うべきではない」と力説しました。とうとう私は根負けしました。

オオゴシさんが何を言ったのかは知りません。しかし、好き放題に他人を侮辱しているにもかかわらず、自分が何か言われたときの執念深さは何なのでしょうか。

 

ミニ四駆ムックの最初のミーティングは、7月に行われました、私はこのときまで、父が他界したことを必要最小限の人にしか伝えていませんでした。そんな話を聞いても、楽しい気分になる人はいないと考えたからです。

しかし、ムック制作のメンバーには伝えておく必要があると感じました。まだ四十九日も終わっていないし、初盆もあるし、何よりも弟が意味不明なことを主張し、母に対して訴訟を起こすとまで言い始めていたのです。

ミーティングの席で、「父が他界しました。葬儀だけは終えたのですが…」と切り出しました。“まだフルに動くことができません”ということを伝えたかったのです。さすがにみんな沈黙しました。山鼻氏以外は。

 

山鼻氏は笑いながら「仕事復帰、おめでとう」と言いました。親の死について話している人間に、「おめでとう」という人を、私は生まれて初めて見ました。

彼が相手の気持ちを考えないのはいつものことです。しかし私は、“現状では制約が多く、皆さんのスケジュールに合わせられない場合も出てくる”と伝えたいのです。山鼻氏の横槍で、その意図は伝わらなくなっていまいそうでした。

それで「まだ四十九日も終えていないし、家庭内で色々とゴタゴタもあって」と付け加えました。すると山鼻氏は唐突に「そういうことはな! どんな家庭でも多かれ少なれあるんだよ!!」と、私を指差し、大声で怒鳴りつけました。

怒鳴られた意味はまったく理解不能です。とにかく、他人を指差して罵倒するのは、彼にとってよほどの快感なのでしょう。

 

ミーティングの帰り道、以前私が担当した『RCカー初心者向けムック』の話が偶然に出ました。すると山鼻氏は「ああ、あの本は読んでいない」と小馬鹿にしたように笑いながら言いました。これには絶句しました。読んですらいない本の悪口を、方々へ言い触らして回っていたという事実を、このとき初めて知ったわけです。

 

「⑤連載打ち切り」に続きます。